映画「ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち」の、計画を実践して立ちはだかった問題や、それらの問題をどうやって乗り越えたのかなどのネタバレあらすじ内容を結末まで解説します。
また、この映画の深い意味を感じ取った感想についてもまとめています。
ハミングバード・プロジェクトのネタバレあらすじ
ハミングバード・プロジェクトという映画は、ニューヨークに住む男ヴィンセントと、その従兄弟のアントンが、高速・高頻度のシステムを作ることで為替取引で儲けようとするお話です。
「ハミングバード・プロジェクト」という映画のタイトルは、「カンザスからニューヨークまでを光ファイバーケーブルで繋いで、高速な為替取引を行う計画」という意味です。
映画ハミングバード・プロジェクトは、全ての情報がデジタル化していく現実の世界を元にしたお話なのです。
物語の始まりとヴィンセントの計画
ニューヨークからカンザスまでは、車で2時間かかりますが、ヴィンセントは往復で0.016秒の距離にしたいと考えています。
ヴィンセントは、「ライン(光回線)」にこだわる男でした。
その理由は、配管工事を仕事としていた時の、配管で頭を打った時の不思議な体験が原因です。
ヴィンセントは、作業中に誤って配管に頭をぶつけたことがありましたが、その時「ラインだ。ラインを繋げ」という不思議な男を見たと言うのです。
ヴィンセントは、霊感とか、スピリチュアルな出来事を信じるタイプではありませんが、この不思議な男の発言が頭にしっかりと刻み込まれ、「ラインを繋げずにはいられない」と言います。
ラインを繋げたらどうなるかは、ヴィンセントにも分からず、「宝くじのようなものだ」と言うヴィンセントですが、ラインを繋ぐことに使命感を感じているのでした。
世界恐慌のきっかけとされた1929年の株価大暴落(ウォール街大暴落)を人々が経験してから、株市場では情報の速さがとても重要なものとなっています。
株の高速度なコンピューター処理はとても肝心で、アルゴリズムが早ければ早いほど、0.001秒で多額のお金を得ることにもなりますが、処理機能が遅いと市場全体が大暴落していまいます。
ヴィンセントは、「光」に関してとても詳しい天才肌の従兄弟のアントンと共に、現在の情報ラインを0.001秒に早める工事を計画しているのでした。
ヴィンセントとアントンの計画
ヴィンセントとアントンは、為替を扱うトップクラスの会社で一緒に働いていますが、手柄を自分たちのものにする為に、ボスのエヴァに知られないように、こっそりと計画を進めています。
アントンは天才で、会社でもボスに認められている有能者です。
そのアントンが、ヴィンセントの計画を会社に乗っ取られずに自分で実現するという夢を叶える為、会社に辞表を出しますが、もちろんボスは大反対。
「アントンの頭の中にあるアイディアは私の物だ!」とまで発言します。
そんな自分を所有化しているボスに冷たい視線を送り、アントンは会社を辞めるのでした。
ヴィンセントとアントンは、とても良いチームです。
天才的計画を持つ頭のいいアントンは、驚くほどのひらめきや知識を持っていますが、人との交渉が若干苦手だったり、神経質なところがあります。
その点、ヴィンセントは、アントンのように天才ではありませんが、人との交渉に長けていて、人に理解してもらう為の話し方を心得ており、心の熱さがあります。
そんな2人のコンビに加わるのは、マークという男。
過去にロサンゼルスからサンフランシスコを繋いだ経験を持ち、今回のヴィンセントたちの光ファイバー工事にあたる男です。
ヴィンセントとアントンの計画は、カンザスとニューヨークを真っすぐな直線で繋げることです。
その直線上にあるものは、民家であろうと、山や川であろうと、交渉をすることで工事を進める必要があります。
どこまでも「真っすぐなライン」にこだわる計画に、マークの血は騒ぐのでした。
計画の実現に立ちはだかる問題
ヴィンセントたちの計画の実現に、4つの問題が立ちはだかります。
問題の1つは、アントンが去ったトレード会社のボスが、アントンたちをスパイし始め、アントンたちの計画を知ってしまうことです。
ボスには得ることのできない天才的なアイディアが実行されていることを知ったボスは、「過去に会社を辞めた人間が奇抜なアイディアで成功したところ、その会社のボスが ‘アイディアは会社から盗まれた物だ’ と起訴を起こし、勝ったのはボスの方であるという話」と、「起訴されて捕まった男は8年間刑務所に入れられ、アントンが同じ目に遭えば、8年も娘に会えない話」をしてアントンを脅します。
その脅しにも応じないアントンは、FBIに逮捕されてしまうのでした。
ヴィンセントたちの計画にはだかる2つ目の問題は、ヴィンセントが末期の胃がんを患っているということでした。
お腹の不調を感じて医者にかかったヴィンセントは、今からすぐに処置を始めたとして、2~3年が余命だと告げられます。
頑張っても5年。
すぐにでも治療が必要な状態であることを告げられたヴィンセントは、計画を実行し続けることを選ぶも、倒れてしまうのでした。
そして、3つ目の問題は、田舎のとある民家の工事が認められないことでした。
光ファイバーは、民家の地下深くを通り、見ることもなければ感じることもありません。
しかし、この民家のオーナーは、そういったインターネット社会から逃れる為に田舎で暮らしていると言い、多額の協力金にも目がくらみません。
「工事には協力しない」の一点張りです。
そして、さらなる4つ目の問題は、ラインの中間地点に、アントンたちの元ボスがタワーを建て、ラインが繋がれない様に邪魔をしていたのでした。
こうして、数々の問題が積み重なり、スポンサーもヴィンセントたちを見切り、計画は失敗に終わったかと思われました。
ハミングバード・プロジェクトの結末ネタバレ内容
完全に失敗に終わったかと思われた計画でしたが、その計画を立て直したのは、天才のアントンでした。
刑務所に10年の予定で入れられていたアントンは、刑務所にある電話を使って、元ボスの会社の回線スピードを落とします。
アントンが元ボスを刑務所へ呼び出すと、「自分を刑務所から出さないと、回線スピードをさらに遅くさせる」と伝えます。
元ボスは、しぶしぶアントンを刑務所から解放するのでした。
次に、アントンは、ニュートリノ・メッセージングという、ニュートロンよりも速い電気を使う案を思いついていました。
ニュートリノという幽霊粒子は、回線ラインの中間にどんな障害物があっても、光の速さが遅くなるということがありません。
その為、カンザスからニューヨークを結ぶラインを確実に素早くつなぐことができるのでした。
このアントンのアイディアは、工事に賛成しなかった民家や、元ボスの邪魔なタワーも問題になりません。
ヴィンセントとアントンの計画は、最終的に成功するという流れで映画は終わるのでした。
そんなヴィンセントの最後の疑問は、「僕に0.016秒で届くイメージや、センス、感情は、どうやって送られてくるのだろう?」という非常に興味深いもので、アントンは「分からない」と優しく微笑むのでした。
ハミングバード・プロジェクトを見た感想
私は為替取引とか、数学的なことに全くと言っていいほど興味がなく、苦手な方ですが、映画「ハミングバード・プロジェクト」はとても面白かったです。
まず初めに、天才のアントンを見ていて、「天才的な人って確かにこんな振る舞いなところあるよな」と共感しました。
そして、末期の胃がんを患っていても、自分の使命を貫き通そうとするヴィンセントの心の強さに感動しました。
正直言って、ハミングバード・プロジェクトの原作本の内容を知っているので、ヴィンセントたちが英雄であるとは思えませんが、世界で問題視されているヴィンセントたちの視点を知ることで、なんとも複雑な気持ちになりました。
ヴィンセントたちは、根っからの悪人ではないのですね。
映画ハミングバード・プロジェクトの原作本は?映画との違いについても
それから、光の速さを競う為替取引会社の、いわゆる頭の良いビジネスマンたちがストレスの中で働いている様子や、少しのことで心を乱してしまう様子も、共感しました。
さらに、夢を叶えたいと仕事に打ち込む男をなかなか理解できない妻にも、共感しました。
さらに、インターネットとか、情報社会から逃れて、速さとか全く気にせずに、平穏な生活をしたいという民家のオーナーにも共感しました。
つまり、この映画は、今現実の世界に起こっている金融業界の問題を取り巻く人々の視点を捉えつつも、共感するポイントがたくさんある映画で、様々な立場の私たちがそれぞれに学ぶことができる映画だと思います。
また、この映画は、まさにヴィンセントの使命感や、最後の疑問に大きなポイントがある映画だと思います。
ヴィンセントは、何者かから伝えられた使命を果たそうと生きており、使命を果たすことに忠実です。
この使命感を、人々は野望と呼びます。
ヴィンセントは、この世に生まれてきた意義みたいなものを全うする為に生きており、この世に生まれてきた意義みたいなものは、感情とか、イメージとか、感覚とかで、いつも内側から送られてきているということが言いたいのだと思います。
私たち人間には、皆それぞれ異なる使命や野望があり、悪を裁くということは、簡単なことではないと思い知らされました。