「アラジンの魔法のランプ」と「アリババと40人の盗賊」と「船旅シンドバッド」はよく混同されがちな3つの物語です。
ここでは、アラジン、アリババ、シンドバッドのあらすじをまとめながら、共通点と相違点を比べてみたいと思います。
「アラジン」「アリババ」「シンドバッド」の共通点
「アラジンと魔法のランプ」と「アリババと40人の盗賊」と「船旅シンドバッド」は、全てアラビアンナイトという千夜一夜物語の中のお話です。
アラビアンナイトとは、「作品集」のことで、神話や不思議な話、空想の話や伝説など、様々なジャンルのお話が、様々なライターによって加えられ、まとめられた作品のことです。
その為、たくさんのお話の要素がアラビアンナイトには含まれており、登場人物もストーリーの数だけいます。
そんな膨大な情報量の作品「アラビアンナイト」の中から抜き出された、有名で良く知られている物語が、「アラジンと魔法のランプ」「アリババと40人の盗賊」「船旅シンドバッド」という3つのお話です。
この3つには、
- 原作がアラビアンナイトという千夜一夜物語であること
- 主人公が中東の男性であること
- 宝石や宝、財産が絡むこと
- 冒険や悪人の要素が含まれていること
などの共通点が挙げられます。
そして、何よりも、これら3つのお話は、1人の人間の「欲」にまつわる教訓を含んでいるという共通点があります。
この教訓を、異なる視点から見た3つのお話であったと言えるでしょう。
しかし、この3つは全く異なる3つの物語です。
以下に3つの物語のあらすじをまとめていきます。
アラジンと魔法のランプの物語のあらすじ(原作)
主人公であるアラジンは、父親が死んでも働くことなく遊びほうけています。
母親が稼ぐ少ないお金で二人は暮らしていましたが、ある日、アラジンに、「父親の弟である」と名乗るアフリカの妖術使いが近づきます。
彼は、大地の裂け目にある魔法のランプを取ってこられるのはアラジンだけだと知っていたのです。
そして、彼はアラジンを連れ出して大地の裂け目から魔法のランプを取ってくるように指示します。
それでお宝を山分けしようという魂胆です。
アラジンは言われるままに大地の裂け目に入り込んでランプを手にしますが、綺麗なガラス玉だと思った宝石を服に詰め込みすぎたアラジンは、大地の裂け目から出ることができませんでした。
すると、アフリカの妖術使いは怒って、アラジンをランプと共に大地に生き埋めにしてしまいます。
困ったアラジンは、妖術使いに持たされていた指輪をこすり、出現した鬼神に家へ帰れるようお願いします。
その後、ランプを売って生活費にしようと考えたアラジンの母親は、ランプを磨こうとこすります。
すると、指輪よりも巨大な魔神が出てきました。
アラジンはご馳走を出すように頼んで、食べてはお皿を売ります。
その結果、生活費を稼ぐことができ、アラジンは悪友たちと縁を切って、お金や宝石の価値など、知識を増やしていくようになります。
アラジンはある日、帝王の娘に一目ぼれし、宝石の果物を持って求婚に向かいます。
帝王はアラジンを認めるようになりますが、プリンセスの結婚相手となるべきだった息子を持つ大臣は大慌てします。
しかし結局アラジンは魔神に頼んで自分を王族の一員に仕立て上げ、みんなに好かれるのでありました。
ところが、アラジンが生きていることを知った妖術使いは、腹を立て、ランプを取り返す策に出ます。
ランプを取り返すと、宮殿ごと自分の陣地に移動させます。
娘のプリンセスと宮殿を失った帝王は、大臣の入れ知恵で、アラジンが犯人であると迫ります。
しかし、アラジンは指輪の鬼神を使ってなんとか宮殿とプリンセスを元に戻すことに成功し、帝王はアラジンを正式に迎えることにしたのでした。
アリババと40人の盗賊の物語のあらすじ
主人公はペルシャの真面目で貧乏な働き者のアリババです。
ある日アリババがロバを引いて歩いていると、盗賊たちがお宝を岩の扉に閉まっているところを目撃します。
アリババは、盗賊たちが消えたのを見計らって、盗賊たちの岩の扉へ侵入し、お宝を盗んで立ち去ります。
弟の突然の収入をおかしいとおもったアリババの兄は、アリババから事情を聴きだし、自分も盗賊の岩場からお宝を盗もうとしますが、扉を開ける呪文を忘れてしまい、戻ってきた盗賊たちに殺されてしまいます。
アリババは、兄の死体を見つけ、兄に仕えていたモルジアナに事情を話し、兄の葬儀をした後、兄の財産を正式に引き取ることになります。
盗賊たちはアリババがお宝を盗んでいたことを突き止めると、彼を殺そうとアリババの家に、手下と共に侵入します。
アリババが夜寝ている時に殺そうとしていた盗賊の頭領ですが、モルジアナの機転により、仲間が皆殺されたことを知って、そそくさと逃げてしまうのでした。
その後、盗賊はアリババを殺そうと再度アリババの家へもぐりこみますが、またしても賢いモルジアナによって成敗されます。
そんなモルジアナは、奴隷の身分から解放され、アリババの養子になっていた兄の息子の妻となり、アリババ家は皆幸せに暮らすのでした。
船乗りシンドバッドの物語のあらすじ
シンドバッド(東洋ではシンドバード)は、冒険を思い立ち、財産を乗せて船旅に出ます。
シンドバッドの船乗りの旅は、全部で7話あります。
1話 クジラにより船を逃がす
冒険に出ようと船で旅を始めたシンドバッドは、島と思って降りたクジラが沈んだことで、仲間が皆海へ沈み、シンドバッドはある島に辿り着きます。
そこの島でシンドバッドは歓迎され、無くしたと思っていた財産と船を取り戻すことができます。
2話 ダイヤモンド鉱山
船旅に出たシンドバッドは、上陸した無人島に置き去りにされてしまいます。
その島にはダイヤモンド鉱山があり、大蛇がたくさんいます。
人々は羊の肉をダイヤモンドに引っ掛け、大きな鷲などがダイヤモンドごと肉を掴み上げるのを利用して、ダイヤモンドを採取しているのでした。
ダイヤモンド鉱山にいたシンドバッドは、ダイヤモンドをたくさんポケットに詰めて、自分の体に羊の肉を巻き付け、脱出します。
3話 猿ヶ島
シンドバッドは、猿ヶ島という島に漂流します。
そこでは、大蛇や巨大な猿の命を狙われたが、何とか命を守り、通りがかりの船に救助されて脱出します。
4話 人食いの島
シンドバッドは、嵐でまたある島に打ち上げられます。
その島は、人を食べる人々が住んでいました。
人の肉を食べた仲間たちは次々と知性を失い、今度は食べられる側になっていったのでした。
人の肉を食べなかったシンドバッドは、何とか生き延びたが、その島で妻をめとったシンドバッドは、「夫婦の1人が死ねばもう1人も生き埋めになる」というルールによって井戸の底に置き去りにされます。
しかし、井戸の底に現れた動物の後をつけることで出口を見つけ、船をつかまえて故郷に帰ることになります。
5話 怖い老人
シンドバッドが次の島に行きつくと、商人たちの報復に合い、船を襲われます。
その島にはある恐ろしい老人がいて、肩に乗せてくれと頼む老人を肩に乗せると、首を絞められて、老人が肩から降りなくなります。
シンドバッドは、何とかお酒を飲ませて酔わせ、その隙に老人を振り下ろして殺すのでした。
6話 川下り
シンドバッドは、今度は山にぶつかって難破します。
そこは宝石がたくさんある島でしたが、食べ物がなく、シンドバッドは川に流され出ることで島を脱出します。
流れ出たところをその国の王に助けられたシンドバッドは、持っていた宝石の一部を王にあげ、故郷へ帰してもらうのでした。
7話 最後の冒険
シンドバッドはもう冒険は終わりにしようと思っていましたが、自国の王に、前話の王へのお使いを頼まれ引き受けることになります。
無事に使いを果たしたシンドバッドでしたが、帰りの船旅で海の化け物に船ごと丸のみされてしまいます。
なんとかとある島に逃げ生き延びたシンドバッドは、親切な老人に助けられ、しかも、自分の娘と結婚をして財産を引き取って欲しいと言われます。
それを受けたシンドバッドは、娘と結婚し、莫大な財産を得ることになりましたが、この島には、変わった風習があります。
毎年春になると、島の男たちには羽が生え、一人残らず飛び立つのです。
飛べないシンドバッドは、ある男にしがみついて天へ上がっていきますが、アッラーへの賞賛を口にすると、落とされてしまいます。
しかし、大蛇に飲まれそうになっている同じ男を助けたことで、妻と自国へ帰り、シンドバッドの冒険は幕を閉じたのでした。
アラジン、アリババ、シンドバッドの違い
「アラジン」という物語は、仕事に就いていなかったアラジンが魔法のランプを手に入れることで、自分の願いを叶えますが、その後問題に巻き込まれ、最後は魔法に頼らずに、自分の力で幸せを手に入れるお話です。
「アリババ」という物語は、働き者の貧乏な男が、盗賊の宝を盗み、兄の妻となる女性に守られて幸せになるお話です。
「シンドバッド」という物語は、船旅でどんな経験をして、どのようにして財産を手に入れたのかというお話です。
どの物語の男も、財産を手に入れて幸せになるというストーリーには変わりありませんが、それぞれ財産の手に入れ方が異なります。
アラジンは心の綺麗さで幸せを手に入れました。
アリババは、悪から盗むことでなんとか幸せになっています。
シンドバッドは、彼の冒険という経験で幸せになっています。
つまり、これら3つの物語の違いは、幸せな結末を迎える方法が違ったのでした。
まとめ
アラジン、アリババ、シンドバッドには、「1人の男が財産を手に入れて幸せになる」という同じストーリーがあり、3作ともアラビアンナイトから抜き出された物語です。
なので、同じお話ではないかと混同してしまいがちですが、それぞれの男の幸せな結末の迎え方が異なるのでした。
これが意味することは、私たちは何をしても幸せになれるということだと思います。
最も人気なのは、心の綺麗さで幸せになったアラジンのお話ですが、悪いことをしても、幸せになることはできるようです。
ただ、その幸せがいつまで続くかは、異なると思います。
私たちも、どのように幸せになるのか、気をつけたい物ですね。